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コンピューターで描きだせない設計図

 我が家を設計してくれた趙さん(趙海光氏)のホームページの先週のコラムに、雪のちらつく奈良東大寺南大門が取り上げられていました。南大門のような建築というのは、ヒトの生活にベタベタまとわりついてこないで、人間とは別の秩序で成り立っているところが凄い、というようなことが書いてある。
 奈良や京都のお寺や塔の端整というか凛としたところってなにかすごいなと思っていたので、そういうことなのかと感じ入った。

 我が家を建ててくれた工務店と趙さんと我が家夫婦で、木曽の製材所を見学にいったことがあります。 そのついでにみんなで馬籠宿の本陣屋敷を見学しました。 そのとき若き青年現場監督くんが、眼を輝かせてその屋敷の構造(柱の取り合いと言っていた)をつぶさに見ていました。 こういった古い建物を研究していると言っていた。(古建築というのだそうです。 ふる建築ではなくて、こ建築です。)

 こうした建築は各所に微妙な設計が施されているそうです。 たとえば柱が完全な円柱ではなくて中程がほんのり太くなっていたり(エンタシスという)、天井をまったく水平にすると中央が垂れているように感じるのでほんの少し吊り上げてあるとか、屋根の微妙な反り具合をつけて、えも言われぬ美しさをだすといった工夫がいろいろあるのだそうです。 上記のエンタシスも並んでいる柱が立ち位置でそれぞれ違う曲線を持っているのもあるそうです。 
 ここにはコンピューターでは描きだせない、図面では表すことのできない曲線が古い建築を端整にみせているのだと思います。 職人技のものすごいところです。

 趙さんの仰っているポイントとはずれているのかもしれませんけれど、むかしの大工さんは、住みやすいとか機能的などと言われるのとは全く違った次元で、建物に美しさをつくりこんでいたのですね。 下に紹介する本を読んでいただけるとよく判ると思います。 こうしたことを知りつつ自分の家を建てると、面白さも格別です。
  「木に学べ」西岡常一
   法隆寺・薬師寺の美しさを宮大工の視点で書いてくれて
   います。建築の美しさが判ります。 木の家がすきな人は
   ぜひおすすめです。
          わたしは、この本を読んだ後、奈良に実際に見に行って
   しまいました。

  「木のいのち木のこころ(天)」 西岡常一
   上記宮大工の西岡常一さんの本、こちらは職人の誇り、
   技の継承などが書かれています。 現代のプロジェクト
   管理と重ねあわせて読んでも、貴重なポイントが各所に
   でてきます。

  「職人が語る「木の技」」 安藤邦廣
   宮大工、鍛冶、左官、建具、瓦、さまざまな職人さんの
   技とこころについて、職人さんのインタビューを軸に
   書かれています。
   家を構成するいろいろなものの”本質のところ”を知る
   のに役立ちます。

  「古建築の技 ねほり、はほり」 関美穂子
   この本も古建築に携わる職人さんたちの技を、ねほり、
   はほり、引き出してくれています。 職人さんはここまで
   やるのか!と感心することしきりです。

  「民家のこころ」 道塚元嘉
   民家の構造について、土間、小屋裏、囲炉裏、軒、縁側
   など、それぞれの細部の成り立ちや構造を紹介しています。
   民家を立てたい人におすすめ。

  「木のある生活」秋岡芳夫
   有名な工業デザイナーです。 建物ではありませんが、
   木のある生活の良さをいろいろな道具をとおして教えて
   くれます。
   木のお椀の完璧な手頃さのデザイン(外側と内側のカーブ
   の違いの秘密)、桶と樽の精妙なメカニズムの違い、
   女の弁当箱(食べるしぐさの美)、おいしい箸(見立ての
   サイエンス)など、かくも美しくて心地よい道具がむかし
   からあったのかとジンときます。

 

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